■HOME>■基本知識集(相続・遺言・後見)>「遺言」の基本知識>遺言で書けること(遺言事項)
次の14項目になります。これら以外の事項を書いたとしても、それは法的な効力は生じません。(但し、他の遺言事項の記載と合わせ、有効無効を判断する際や趣旨を確認したり、“参考”になることはありえます。)
※なお、以下に記載の条数については、相続法改正を機に見直し作業中です。見直し完了までしばらくお待ちください。
…「廃除(はいじょ)」とは、相続させたくないと感じるような非行があった場合に、家庭裁判所に請求することで(推定)相続人から相続権を奪うことができる制度です。これを遺言書に書いておくことでも手続きができます(亡くなった後に、「遺言執行者」が家庭裁判所に手続きをします)。
…「長男は3分の2、次男は3分の1」というように、相続人間で割合に差を付けるように定めることができます。なお、このように定められた相続分を、民法で定められている「法定相続分」に対して、「指定相続分」と呼びます。
…「土地Aは長女に、土地Bは次女に」というように、「こういう分け方をしなさい」という定めをすることができます。なお、遺産の分け方を第三者に決めてもらうこともできます。
後者の「禁止」は、5年を超えない期間を上限として定めることができます(実務ではあまり見受けられません)。
… 「特別受益の持ち戻し」とは、結婚の時や、生計の資本として生前に財産をもらって(贈与を受けて)いた相続人がいる場合に、それを考慮して法定相続分を修 正することを言います。遺言で何も書かなければ、民法で規定されるとおりに法定相続分に修正が図られる(持ち戻しされる)のですが、遺言で「特別受益の持ち戻しを免除する(修正しないでね)」ということを書いておくことができるのです。ここはちょっと難しいところですね。
※本件は相続法改正により推定規定が整備されました。相続法改正については、以下のブログ記事をご確認ください。→相続法改正について
…ここも難しいところです。たとえば、遺産総額の中で、多額の債権(→AがBに対して1億円を貸していた場合に、AがBに対して「貸した1億円を返してよ」と請求する権利のことをいいます)がある場合は、この規定が重要になります。
… 「遺留分(いりゅうぶん)」とは、ざっくり説明すれば、法律上最低限確保されている遺産に対する取り分(割合)のことを言います。相続人であれば、誰もが 「遺留分」を有しているわけではなく、(第三順位となる)兄弟姉妹は「遺留分」がありません。この「遺留分」を持っている相続人が、その「遺留分」に相当 する財産をもらえていない場合に、他の相続人に対して、「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」という主張をすることができ、「遺留分」に 達するまで金銭での請求することができるのです。この「遺留分」をどこの財産から引っ張ってくるかというところで、別段の定めをすることができるのですが…ここもちょっと難しいですね。
※本件は改正相続法に関する事項です。
…②③と並び、とても書かれることが多い項目です。「遺」言書で「贈」与することを、「遺贈(いぞう)」と呼びます。「すべての財産を、●●へ遺贈する」という財産を丸ごとあげる(譲渡する)ような内容でも法律上有効な遺言書となります(但し、前述の遺留分の問題があります)。
なお、「遺贈する」と書くか「相続させる」と書くかで、遺産承継手続きが大きく異なる場合があります。特に「農地」の場合は、農地法の許可の要否にも影響することがあるため、非常に重要です。不安な場合やわからない場合は、必ず専門家に依頼するようにご注意ください。
… 婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子を、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と呼びます。「認知(にんち)」とは、父が「この子は自分の子である」と認める ことを呼びます。この父の「認知」によって、父親との法律上の親子関係が生じることになりますが、この「認知」は遺言でもできることとなっています。言葉がちょっと難しいところです。
…未成年(民法では20歳未満)について、「親権(しんけん)」を行うものが誰もいなくなってしまった時は、その未成年者について、未成年後見人が選任されます(民法第840条)。その未成年後見人を遺言で指定しておくことができます。
… 「遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)」とは、遺言書に書かれている内容を実際に実現する仕事をする人のことを呼びます。この「遺言執行者」を指定することは任意ですが、指定しておくと実際の手続きがとてもスムーズに進むため、指定しておくことを推奨しているのが実務です。
…信託(しんたく)とは、委託者(いたくしゃ)が、その信頼できる人(受託者(じゅたくしゃ)といいます。)に対してお金や不動産などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理や処分などをする制度のことを言います。
「信託」を活用するメリットについてはここでは省略致しますが、「信託」制度を活用する場合は、生前に信託契約を締結してしまうことが多いため、遺言で作成された実例は少ないでしょう。
…近年の保険法改正により明記されたものです。「死亡保険金」については、相続財産とは異なる取り扱いがされるため、保険契約で定められた保険金受取人や保険約款の規定を巡って、問題になるケースが相続実務ではしばしばあります。遺言書を作成する際には、自己の保険内容についてもしっかりと把握し、必要に応じて保険受取人を変更するなどの対策をとらなくてはなりません。
…「遺言」制度は、日本だけのものではなく、世界各国において同様の規定が設けられております。外国籍の方が亡くなった場合や、外国籍の方が遺言を残したい場合などには、まずは日本の法律である「遺言の方式の準拠法に関する法律」及び「法の適用に関する通則法」を確認しなくてはなりません。そして、本国法(国籍がある国の法律)の法律を調べるわけですが、本国法の規定により認められていることがあります。つまり、「相続については日本法に従って財産承継を考えてね~」と書くことができるのです。…少し専門的ですね。
【関連記事】
・どの種類で遺言書を作成する?~遺言書の種類(方式)の解説~
・比較表でバッチリ!「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いまとめ
・鉛筆書きは要注意!Wordもダメ!~自筆証書遺言の紙とペンについて~
・「遺言」で書けることは少ない?!14個の遺言事項まとめ
・責任重大!遺言執行者の権利義務とは?就任したらまず何をする?
・遺言執行者の指定がない場合は?選任審判の申立て方法は?いつだれがする?
・未成年者、認知症患者、字が書けない人…遺言作成できる?作成できない?
・専門家が教える!「遺言書」を作成する際に気を付けるべき5つのポイント
・遺言書の作成で最も大切なこと ~ 「付言」なくして「遺言」なし ~
《コンテンツメニュー》
★家族のために正確な遺言書を書きたい!~抑えておくべき遺言の基本知識~
★家族の「もしもの時」に備える!~抑えておくべき相続の基本知識~
■HOME>■基本知識集(相続・遺言・後見)>「遺言」の基本知識>遺言で書けること(遺言事項)