雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成するものです。この制度があることにより、事業主としては解雇することなく、少ない負担において、積極的に「休業」という選択肢を用いることが出来るため、離職者の防止に繋がると期待されています。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主に対しては特例措置があり、緊急対応機関として4月1日~6月30日が定められています。
雇用調整助成金制度の概略は、右の画像をクリック頂き、「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」をご覧頂くと理解がスムーズです。
令和2年5月19日以降は、小規模事業主(※従業員が概ね20人以下の会社や個人事業主の方を対象)に関しては、手続きが大幅に簡素化されていますので、より活用しやすい制度となっています。
※右のマニュアル画像をクリック頂くと、同マニュアルを開くことが可能です。驚くほど簡素化された印象です。
雇用調整助成金を受給する事業主は、次のいずれの場合にも該当していないことが必要です。よくある勘違いですが、「事業主の都合による解雇等を行っていたとしても」以下の要件に該当しなければ、雇用調整助成金を活用した休業等の実施を行うことが可能です。
①平成31年3月31日以前に申請した雇用関係助成金について不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けたことがあり、当該不支給決定日又は支給決定取消日から3年を経過していない。
②平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けたことがあり、当該不支給決定日又は支給決定取消日から5年を経過していない。
③平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について不正受給に関与した役員等がいる。
④暴力団又は暴力団員又はその関係者である。
⑤事業主等又は事業主等の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に属している。
⑥(既に)倒産している。
⑦雇用関係助成金について不正受給を理由に支給決定を取り消された場合、労働局が事業主名等を公表することに承諾していない。
令和2年4月10日に発表された新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置の説明です。 支給要件を大幅に緩和し、申請様式等の緩和を行っております。なお、令和2年5月19日より、手続きがさらに簡素化されました(5月6日に予告された該当WEBサイト:雇用調整助成金の申請手続の更なる簡素化について)。
令和2年5月20日時点における特例措置の内容は、以下の通りです。
※令和2年4月1日から令和2年6月30日までの休業等に適用
① 休業手当に対する助成率を引き上げ (中小企業4/5、大企業2/3)
② 解雇等行わない場合、助成率の上乗せ(中小企業9/10、大企業3/4)
③ 教育訓練を実施した場合の加算額の引き上げ(中小企業2,400円、大企業1,800円)
④ 新規学卒者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者も助成対象
⑤1年間に100日の支給限度日数とは別枠で利用可能
⑥雇用保険被保険者でない労働者の休業も対象に
※休業等の初日が令和2年1月24日以降のものに遡って適用
⑦生産指標の要件を緩和(対象期間の初日が令和2年4月1日から令和2年6月30日までの間は、5%減少)
⑧最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象
⑨雇用調整助成金の連続使用を不可とする要件(クーリング期間)を撤廃
⑩事業所設置後1年以上を必要とする要件を緩和
⑪休業規模の要件を緩和
※休業等の初日が令和2年1月24日から令和2年7月23日までの場合に適用
⑫事後提出を可能とし提出期間を令和2年6月30日まで延長
⑬短時間一斉休業の要件を緩和
⑭残業相殺制度を当面停止
⑮申請書類の大幅な簡素化
↑原則的な手続きにおいては、必要とされた「休業計画届の提出」については、令和2年5月19日以降は(事後にも)不要となりました。
雇用調整助成金を活用するには、休業等について、労使間の協定に基づく必要があります。そのため、使用者側の一方的指示ではなく、労働者側の意見も聞いて、計画を定めていく必要があります。この協議は、労働者側全員とする必要はないですが、「労働者の過半数を代表する代表者」を決めてもらわないといけません。
※「労働組合」がある場合は、労働組合と使用者側で協定を行いますので、労働者側の代表者を選定する必要はありません(とはいえ、労働組合がない場合が大多数だと思われます)。
※令和2年5月19日以降に、申請手続きが簡素化され、特例措置においては、本書類は提出不要となりました。
雇用調整助成金の活用をする前提として、労働者代表が決まったら、いよいよどういう風に休業を行っていくかについて、協議を行っていきます。「一斉休業」がイメージしやすいと思いますが、事業内容によっては、一斉休業は実務に与える影響が大きく、現実的ではない場合もあります。また、労働者側が最も気になるのは、休業期間中に「休業手当」はいくら払われるのか(又は教育訓練が行われるのか)といった点になるでしょう。就業規則に明記されていればトラブルは少ないかもしれませんが、法定基準である「60%以上」では生活が出来ないという従業員も多くなると、協議がうまく進まない場合も生じるでしょう。休業協定書をどのように記載すべきか迷う時は、顧問の社会保険労務士の先生へご相談ください。
※なお事業者の責めに寄らない場合の休業では、労働基準法上は休業手当の支払い義務は事業主に発生しませんが、ここは労使トラブルに発展しかねないため、慎重に判断する必要があります。
※令和2年5月19日以降に、申請手続きが簡素化され、特例措置においては、本書類は提出不要となりました。
雇用調整助成金の適用を受けるためには、休業協定書に基づき、計画通りに休業し、「休業手当」を支払うことが必要です。そのため、休業手当を支払う前に、先に雇用調整助成金をもらうことはできませんし、「休業」としているのに、在宅で仕事しているようなケースは、雇用調整助成金をもらうことが出来ません(故意に行い、事後に発覚すれば、重いペナルティが課せられます)。
なお、休業手当の額は、労使協定で定めた支払い率に基づきますが、「(雇用調整助成金の適用における)平均賃金」の算出が特殊で注意が必要でした。令和2年5月19日以降は、この点も簡略されましたので、特例措置においては、難しい計算は不要となりました。
雇用調整助成金の申請書類等を整え、以下の必要書類(※令和2年5月19日以降、小規模事業者が申請する場合)を整えたら、「(雇用調整助成金の)支給申請」を行います。原則は「郵送」で申請するほか、オンライン申請が可能な準備が整えられているそうです。追加情報をお待ちください(5月20日時点でトラブル発生中のようです)。
本ブログは令和2年5月2日に執筆しています(※5月20日に更新)が、最新情報や申請書の様式ダウンロードについては、細かな修正が都度入ります。そのため、以下のリンク先にてご確認頂きますようによろしくお願いいたします。
新型コロナウイルス感染症に関連した不明点は以下のQ&Aが参考になります。是非ご覧下さい。→新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
雇用調整助成金は、「解雇」を防ぐための助成金(制度)ですので、事業主がすぐに「解雇」を選択するよりは、(せめて限度日数に至るまでの活用については)「雇用を守る」という観点においてぜひ活用するべきでしょう。
但し、すぐに休業をさせるのではなく、休業措置を採らずに、従業員が一丸となって新しいサービス提供方法や新商品の開発等に取り組むことなども重要です。「休業」と計画しておいて、働かせることは出来ません(→雇用調整助成金がその部分は支給されない、の意)。
もちろん、事業ごと、業種ごとに状況は分かれますが、危機的状況だからこそ、会社のために一生懸命に働きたいという従業員もいることでしょう。売り上げが止まると、「人件費」と「家賃(テナント賃料)」は非常に負担が重いのは確かです。広告宣伝費と違って、すぐにカットできるものではありません。抑えたくなるのが人件費です。それでも、本当に「休業をさせる」という選択が良いかどうかについては、高度な経営判断が必要です。
労働者代表(可能なら労働者全員)の意見を慎重に聞いたうえで、どうすることが新型コロナウイルスによる経営危機を乗り越えることが出来るのか、しっかりと考えることが重要になると考えています。
残念ながら、雇用調整助成金に関する問い合わせや相談が殺到しており、電話はほぼ繋がらない状態です。窓口へ直接行ってみるというのも、感染リスクが高まるため、お勧めできません。厚生労働省ホームページの雇用調整助成金に関する解説動画等を見てとにかく要領を読み込むのがベストかもしれません。
雇用調整助成金の申請手続きについて役所に相談できない場合は、「専門家」へご相談する方法があります。この場合の専門家は当法人のような「行政書士(※特例措置のあるごく一部の行政書士を除く)」や「税理士」ではお答えすることができません(社会保険労務士法により、社会保険労務士の独占業務になっているため)。顧問契約している「社会保険労務士」へご相談ください。なお、顧問契約している社会保険労務士がいない場合や、顧問契約している社会保険労務士でもご対応頂けない場合は、全国にある「社会保険労務士会」主催で相談会を行っているケースがあるかもしれません。一度、お近くの「社会保険労務士会」へお問い合わせしてみるとよいかもしれません。なお、当法人(当グループ)でも回答は致しかねますので、お問い合わせはご遠慮ください。
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