相続の用語集
このページでは、相続手続きを行う上で最低限、理解が必要な専門用語について必要な範囲内で解説しています。用語説明の順番は、あいうえお順ではなく、相続を体系的に理解しやすい順番で記載しております。
【相続(そうぞく)】
「死亡」により、故人が有していた財産関係(借金も含む)をまるごと承継することをいいます。
【被相続人(ひそうぞくにん)】
相続手続きにおいて、死亡した方(故人、亡くなられた方)のことをいいます。
【相続人(そうぞくにん)】
被相続人から財産を相続することができる権利を有する親族のことをいいます。配偶者(法律上の婚姻関係にある妻又は夫)に加え、「子ども(直系卑属)」→「親(直系尊属)」→「兄弟姉妹」という順番(順位)で、相続人が決定されます。
【相続分(そうぞくぶん)】
相続人が、被相続人の財産(権利義務)を承継できる「割合」のことをいいます。被相続人が遺言で定めた割合である「指定相続分」と、民法で定められた「法定相続分」の2つの概念があり、指定相続分が法定相続分に優先されます。
【相続人調査(そうぞくにんちょうさ)】
被相続人の相続人が誰になるかについて、被相続人の『戸籍(こせき)』等を収集し、「戸籍上確定させること」をいいます。相続人を明らかにした戸籍等のことを「相続証明書(そうぞくしょうめいしょ)」と呼ぶことがあります。なお、ごくまれに「戸籍が間違っている」というケースがあります。こういった場合は、DNA鑑定などを用いて血縁関係を確認し、戸籍を訂正することが必要になります。
【養子(ようし)】
生物学的な血縁関係がないものの、法律上の親子関係が認められた子のことをいいます。有効な養子縁組がなされている場合、実子(じっし)と同様、養親である故人の財産を相続する権利が生じます。
【代襲相続(だいしゅうそうぞく)】
故人よりも先に、第1順位である子ども(Aさん)が亡くなっていた場合に、その子ども(Aさん)に子ども(Bさん←故人から見れば孫)がいる場合に、ひとつ世代を飛ばして孫(Bさん)が相続することをいいます。
【数次相続(すうじそうぞく)】
故人が亡くなり、遺産分割協議が完了する前に、連続して相続人が亡くなった場合をいいます。数次相続が発生すると、亡くなった相続人の相続人が、故人(最初に亡くなった人)の相続権を引き継ぐため、遺産分割協議の当事者となる相続人が増えることになります。
【遺言(ゆいごん・いごん)】
財産を帰属させたい人や分割方法等について記載し、生前に故人が作成した法律文書のことをいいます。残されている場合の多くは、「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」又は「公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)」のいずれかの形式です。
【遺言執行者(いごんしっこうしゃ)】
遺言内容に従った財産承継を実現するべく、財産の承継手続きを代理する権利を与えられた者をいいます。遺言において直接指定されるほか、事後的に家庭裁判所に申し立てることで選任される場合があります。遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば、誰でもなることができます。遺言執行者がいる場合は、相続人は、遺言の執行手続きを妨げる行為を行うことができません。
【受遺者(じゅいしゃ)】
故人の残した遺言において、「〇〇〇に遺贈する。」と書かれていた場合に、その財産を承継することができる者をいいます。遺言の記載に応じて、「包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ)」か「特定受遺者(とくていじゅいしゃ)」のいずれかに分類されます。
【検認(けんにん)】
残されていた遺言の形式が、「自筆証書遺言」又は「秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)であった場合に、家庭裁判所に対して申し立てが必要となる証拠保全手続きをいいます。なお、「公正証書遺言」の場合は、この検認申し立てが不要であるため、スムーズな遺言執行につながります。
【遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)】
故人が有効な遺言を残しておらず、相続人が複数いる場合において、相続人全員の共有状態(みんなが所有する権利を持っている状態)を解消するために行われる話し合いのことをいいます。
この話し合いにおいて、相続人のうち、誰が何を相続するかを決め、その合意内容を書面に表したものを「遺産分割協議書」といいます。
【相続の放棄(そうぞくのほうき)】
相続人が、故人が有した財産(特にマイナスの財産)を『一切』承継したくない場合に、原則として故人の死亡の事実(及び自分が相続人であること)を知ってから『3カ月以内』に家庭裁判所にその旨を申述(しんじゅつ)し、受理されることをいいます。単に遺産分割協議において、「なにもいらない」として署名押印しても、相続を放棄したことにはなりません(※「法律上の相続放棄」と区別して、「事実上の相続放棄」と呼ぶことはあります)。
【成年後見人(せいねんこうけんにん)】
相続人のうち、認知症等の精神上の障害を理由として、ものごとを判断できる意思能力を欠いている(又は不十分な)人がいる場合に、その相続人の代わりになって、遺産分割協議(や財産の管理)を行う立場の人をいいます。一定範囲の親族から、家庭裁判所に対して申し立てることで、親族の中又は第三者(主に弁護士や司法書士)から家庭裁判所が選任します。ひとたび成年後見人が選任される(後見開始の審判が下りる)と、相続手続きが終わったとしても、そのことのみを理由として、成年後見人がいなくなることはありません。
【成年被後見人(せいねんひこうけんにん)】
成年後見人を付された人(認知症等で意思能力を欠いている(又は不十分な)者)のことをいいます。たとえ、判断能力を欠いている常況の方であっても、「後見開始の審判」を受けていない方は、成年被後見人とはなりません。
【特別代理人(とくべつだいりにん)】
未成年者や成年被後見人が相続人である場合に、その者の代わりに財産を管理し、遺産分割協議を行う立場である「親権者」や「成年後見人」も同時に相続人であり、その者との間に「利害関係」(利益相反関係)が生じてしまいます。このような場合において、未成年者や成年被後見人の財産権を保護するために、家庭裁判所への申し立てによって選任された者を、特別代理人といいます。
【不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)】
相続人のうち、死亡の確認できていない行方不明者(不在者)がいる場合に、その者の財産を管理する者として、家庭裁判所に申し立てることで選任された人のことをいいます。司法書士や弁護士が就任し、家庭裁判所の許可を得て、遺産分割協議に参加します。
【失踪宣告(しっそうせんこく)】
(相続人の一人である)不在者の生死が「7年間」(普通失踪)明らかでない場合に、他の相続人(利害関係人)の請求により、家庭裁判所に申し立てることで、その不在者を死亡したものとみなす制度をいいます。なお、飛行機事故や船舶事故、大震災など、死亡の原因となる危難に遭遇した場合は、「危難が去った後1年間」生死が明らかでない場合でも失踪宣告がなされ、不明期間が短縮されています(特別失踪)。
【相続税(そうぞくぜい)】
相続により承継した財産に応じて、相続した者に対して課税される税金をいい、相続税法という法律で定められています。基礎控除額(きそこうじょがく)が定められており、相続財産の税務上の評価額の総額が一定の範囲を超えない限り、税務署に対して申告する必要はなく、必ずしも相続人した人全員に相続税の申告義務があるわけではありません。
【登録免許税(とうろくめんきょぜい)】
不動産(土地、建物)の所有者については、法務局において「登記簿」が備え付けらており、その登記簿に記載されている事項(登記事項)を変更する際に必要となる税金であり、登録免許税法という法律で定められています。この「登記」という制度は、不動産(不動産登記法)だけでなく、株式会社など(商業登記法)の記録も、法務局に登記簿が備え付けられており、故人が株式会社の取締役であった場合などでも、登記記録を変更する必要があり、不動産と同様、登録免許税が必要となります。
【関連項目】
・相続の基本用語集 ~「相続」の概要を理解するために~
・法定相続分とは?|配偶者なのにすべての財産を相続できない?
・法定相続分に不公平感がある際の調整方法~特別受益と寄与分~
・親も子も兄弟もいない…相続人が誰もいない場合の相続財産の行方は?
・相続するのはプラスの財産だけではない?!相続される財産について
・知らないうちに借金を相続!?相続しない方法(相続放棄)の注意点
・「段取り」が大事!かしこい相続手続きの進め方 ~相続手続きスケジュール~
・相続しても、半分は税金で取られる?!~気になる相続税の概要~
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