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遺言書で書けること(遺言事項)は19個ある?
最終更新:2023年1月20日
遺言書で書けることは、法律で定まっています!
遺言書に記載することで法的な効力を生じさせる項目は次の「19項目」あります。これら以外の事項を書いたとしても、それは法的な効力は生じないため、相続人や受遺者は従う必要はありません。但し、他の遺言事項の記載と合わせ、有効無効を判断する際や趣旨を確認したり、“参考”になることはありえます。反対に、余分な記載が影響して無効可能性を高めることも考えられますので、遺言事項とその他の付言事項は明確に記載を分けるようにしましょう。1つずつ、説明して参ります。
①推定相続人の廃除・廃除の取り消し(民法第893条,第894条2項)
…「廃除(はいじょ)」とは、相続させたくないと感じるような非行があった場合に、家庭裁判所に請求することで(推定)相続人から相続権を奪うことができる制度です。これを遺言書に書いておくことでも手続きができます(亡くなった後に、「遺言執行者」が家庭裁判所に手続きをします)。
②相続分の指定(民法第902条)
…「長男は3分の2、次男は3分の1」というように、相続人間で割合に差を付けるように定めることができます。なお、このように定められた相続分を、民法で定められている「法定相続分」に対して、「指定相続分」と呼びます。
③遺産分割方法の指定若しくは第三者への委託(民法第908条)
…「土地Aは長女に、土地Bは次女に」というように、「こういう分け方をしなさい」という定めをすることができます。なお、遺産の分け方を第三者に決めてもらうこともできます。
④遺産分割の禁止(民法第908条)
後者の「禁止」は、5年を超えない期間を上限として定めることができます(実務ではあまり見受けられません)。
⑤特別受益の持ち戻し免除(民法第903条第3項)
… 「特別受益の持ち戻し」とは、結婚の時や、生計の資本として生前に財産をもらって(贈与を受けて)いた相続人がいる場合に、それを考慮して法定相続分を修 正することを言います。遺言で何も書かなければ、民法で規定されるとおりに法定相続分に修正が図られる(持ち戻しされる)のですが、遺言で「特別受益の持ち戻しを免除する(修正しないでね)」ということを書いておくことができるのです。ここはちょっと難しいところですね。
※本件は相続法改正により推定規定が整備されました。相続法改正については、以下のブログ記事をご確認ください。→相続法改正について
⑥遺産分割における担保責任に関する別段の意思表示(民法第914条)
…ここも難しいところです。たとえば、遺産総額の中で、多額の債権(→AがBに対して1億円を貸していた場合に、AがBに対して「貸した1億円を返してよ」と請求する権利のことをいいます)がある場合は、この規定が重要になります。
⑦負担付遺贈の受遺者が放棄した場合の取り扱い(民法第1002条但書き)
…「負担付遺贈」をする際は、その負担が重荷となり、受遺者が「放棄」される可能性があります。その場合に備えて、どのように取り扱うのかを遺言書内で指定することが出来ます。何も遺言書内で指定しない場合は、負担の利益を受けるべき者がいれば、その方が自ら受遺者になることが出来ます。このような利益を受けるべきものがおらず、遺言書の規定がない場合には、その遺贈の部分は、部分的に無効となり、法定相続分を基本として、不可分の財産については遺産分割協議が必要となるケースが生じます。「負担付遺贈」をする際には、必ずこの項目は検討するようにしましょう。
⑧負担付遺贈の目的の価額減少の場合の取り扱い(民法第1003条但書き)
…かなりレアケースで、筆者もこの事例に遭遇したことはございませんが、「遺言者として、なんとしても負担義務の履行を確保したい場合」などでは、この項目を検討する必要性が生じます。
⑨遺留分侵害額請求の負担方法の定め(民法第1047条第1項第2号)
… 「遺留分(いりゅうぶん)」とは、ざっくり説明すれば、法律上最低限確保されている遺産に対する取り分(割合)のことを言います。相続人であれば、誰もが 「遺留分」を有しているわけではなく、(第三順位となる)兄弟姉妹は「遺留分」がありません。この「遺留分」を持っている相続人が、その「遺留分」に相当 する財産をもらえていない場合に、他の相続人に対して、「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」という主張をすることができ、「遺留分」に 達するまで金銭での請求することができるのです。複数の受遺者がいる場合に、この「遺留分」をどこの受遺者から引っ張ってくるかというところで、別段の定めをすることができます。
※本件は改正相続法に関する事項です。
⑩包括遺贈及び特定遺贈(民法第964条)
…②③と並び、とても書かれることが多い項目です。「遺」言書で「贈」与することを、「遺贈(いぞう)」と呼びます。「すべての財産を、●●へ遺贈する」という財産を丸ごとあげる(譲渡する)ような内容でも法律上有効な遺言書となります(但し、前述の遺留分の問題があります)。
なお、「遺贈する」と書くか「相続させる」と書くかで、遺産承継手続きが大きく異なる場合があります。特に「農地」の場合は、農地法の許可の要否にも影響することがあるため、非常に重要です。不安な場合やわからない場合は、必ず専門家に依頼するようにご注意ください。
⑪認知(にんち)(民法第781条第2項)
… 婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子を、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と呼びます。「認知(にんち)」とは、父が「この子は自分の子である」と認める ことを呼びます。この父の「認知」によって、父親との法律上の親子関係が生じることになりますが、この「認知」は遺言でもできることとなっています。言葉がちょっと難しいところです。
⑫未成年後見人の指定(民法第839条)
…未成年(※18歳未満。法改正が行われる前は「20歳」でしたので、要注意。)について、「親権(しんけん)」のうち、「財産管理権」を行うものが誰もいなくなってしまった時は、その未成年者について、未成年後見人が選任されます(民法第840条)。一般的には、祖父母や叔父叔母などの親戚が選任されますが、その未成年後見人を遺言書で予め指定しておくことができます。
⑬未成年後見監督人の指定(民法第848条)
…未成年後見監督人とは、その名の通り、「未成年後見人が横領や管理財産の散財などをしないか、チェックして、監督する人」のことです。こちらも指定することが可能です。
⑭遺言執行者の指定又は指定の委託(民法第1006条)
… 「遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)」とは、遺言書に書かれている内容を実際に実現する仕事をする人のことを呼びます。この「遺言執行者」を指定することは任意ですが、指定しておくと実際の手続きがとてもスムーズに進むため、指定しておくことを推奨しているのが実務です。
⑮一般財団法人の設立(一般法人法第152条第2項)
…いわゆる「ノーベル財団」と同様に、遺言書で「財団」を設立することが出来ます。実際の手続きは遺言執行者が行いますので、同時に遺言執行者の指定を忘れないようにしましょう(事後的に選任申し立てが出来ますが、手間がかかります)。
⑯信託の設定(信託法第3条第2号)
…信託(しんたく)とは、委託者(いたくしゃ)が、その信頼できる人(受託者(じゅたくしゃ)といいます。)に対してお金や不動産などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理や処分などをする制度のことを言います。
「信託」を活用するメリットについてはここでは省略致しますが、「信託」制度を活用する場合は、生前に信託契約を締結してしまうことが多いため、遺言で作成された実例は少ないでしょう。
⑰保険金受取人の変更(保険法第44条)
…近年の保険法改正により明記されたものです。「死亡保険金」については、相続財産とは異なる取り扱いがされるため、保険契約で定められた保険金受取人や保険約款の規定を巡って、問題になるケースが相続実務ではしばしばあります。遺言書を作成する際には、自己の保険内容についてもしっかりと把握し、必要に応じて保険受取人を変更するなどの対策をとらなくてはなりません。
⑱相続準拠法の適用について(※外国籍の方の場合)
…「遺言」制度は、日本だけのものではなく、世界各国において同様の規定が設けられております。外国籍の方が亡くなった場合や、外国籍の方が遺言を残したい場合などには、まずは日本の法律である「遺言の方式の準拠法に関する法律」及び「法の適用に関する通則法」を確認しなくてはなりません。そして、本国法(国籍がある国の法律)の法律を調べるわけですが、本国法の規定により認められていることがあります。つまり、「相続については日本法に従って財産承継を考えてね~」と書くことができるのです。…少し専門的ですね。
⑲祭祀承継者の指定(民法第897条第1項)
…民法上は、「遺言書で定める」とは明記されていませんが、「被相続人の指定で」としてのその手法として遺言書でも指定が可能とされています。実務では、遺言書で祭祀の承継者を指定することは珍しくありません。
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