少し難しいタイトルとなってしまいましたので、補足説明から致します。
まず「権利義務の主体」というのは、ざっくりと説明しますと、「当事者」のようなものとお考えください。例えば、まだ生まれていないお腹の子(胎児)に対して、お母さんが法定代理人(※20歳に達するまでは親権として親が代理権を有します)として、お父さんとの間で贈与契約(何かをタダで譲ること)を締結できるのか、という問題です。
仮に、まだ生まれていない「胎児」であっても(法定代理人である母親を介してなんらかの法律行為を行い)「権利義務の主体」になることができるのであれば、胎児とお父さんとの間で贈与契約も可能(胎児が所有権という権利の主体になることができる)ということになります。
ところが、相続においては、胎児の権利能力について例外規定があり、「胎児は、相続に関しては、既に生まれたものとみなす。」とされています(民法第886条)。
さて、胎児がいる場合は、既に生まれているものとみなされるため、「妻+子」が相続人になることがわかりました。仮に胎児の状態(まだおなかの中にいる状態)であっても、理論上は遺産分割協議を行い、相続手続きを進めることが可能です。しかしながら、万が一、死産だった場合は、胎児はいなかったこととなり、相続人の範囲が変わってしまうため、相続実務上は、胎児が無事に出生するまで、遺産分割協議や手続きを進めずに待つことがほとんどのようです。
※これまで300件以上の相続相談を受けてきましたが、胎児の事例は一度もありませんでした。胎児の事例を取り扱った先生がいらっしゃいましたら、お教え頂けると助かります。